待ちびと待ちて

 玄関で二振り、並んで座って空を眺める。
 日本号の傍らには資材の山、膝の上には小判の束。
「いつまで待ってりゃいいんだかなぁ…」
「遠征部隊の期間連絡は主の端末に入れておいたから、気付いたら来るよ」
「それがいつだって話だっつーの」
 ぼやく日本号に福島は小さく笑う。今日だけで何度目かの、単独での連続遠征。確かに飽きてしまいそうだが、審神者の出した要望に沿う者は少ない。そのうちの一振りが日本号だった。そういう話だ。
「俺も代わってあげられればいいんだけど」
 残念ながらその申し出は審神者に棄却された。曰く、戻って来た自分を迎えるのはどうしても福島がいいとのことだ。福島に出迎えられると安心するのだとか。
「……出迎えたら安心させられる顔って何だろ…」
 福島の呟きに日本号が頭を抱える。
「どうしたの、号ちゃん?」
「こんなことで意見が一致するとは思わなかったわ…」
「え?主と?」
 ことりと首を傾げる福島。額に手を当てながら日本号が頷けば、ぱっと破顔する。
「号ちゃんも嬉しいんだ!」
「……まあ、そうだな。お前に見送られて出迎えられるんなら、まぁこの面倒な遠征も悪かねぇわな」
「ふふ、そっか」
 思わず笑みがこぼれる。
「あのね、号ちゃんは大変かもしれないけど、俺、この単騎遠征の担当が号ちゃんになってくれて嬉しいんだ」
「お前、俺と一緒にいたいとかそういうのはいいのかよ」
「だって近侍のお仕事あるからどうせ一緒にいられないし。だったら一日に何度も号ちゃんにただいまって言ってもらえる遠征担当のがお得かなって。それに…」
 これは言ってしまっていいのか迷って口を噤む。不謹慎とまではいかないが、あまりに自分本意の物言いだ。
「何だよ、言えよ」
「うん、あのさ、遠征から帰ってきた号ちゃんは主に成果報告しないと中入れないわけじゃない?」
「まぁ、そうだな」
「ちょっと前は違ったけど、今は別の遠征部隊出したりもしてない……だからこうやって遠征の報告待ちをするのは号ちゃんだけなわけだ」
「それで?」
 こちらの言いたいことを察したのか、にやつきながら日本号が促してくる。
「俺が近侍のお仕事片付けたらこうして号ちゃんとふたりきりで主のこと待ってられるから悪くないなって思っちゃったんだよ!」
 言っていて照れてしまい、唇を尖らせて顔を背ける。日本号の方はそうかそうかと福島の頭をかき混ぜてくる。
 ぶすくれた福島を上機嫌で構う日本号の図に、やってきた審神者は首を傾げるのであった。

弊本丸でよくある号福な日常。
審神者に通知が入ってからログインするまでの一幕。
これを書いた頃の2−1シャトルラン担当が号さんで近侍が福ちゃんだったんです。

2023/09/07
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