君と一緒なら

 なんでおっかけてくれないのさ。
 資材の山を両手に、罵る言葉まで受け止めて困った顔をする自分は、傍から見ればこどもの駄々に付き合う親のようなものだと思う。しかし相手は見た目はきちんといいおとなで、駄々をこねる少女のような素振りに加えて似合わない大きな手で顔を覆う。荷運びの間ずっとそうで、すれ違う誰彼がくすくすと笑っている。みっともないと叱れば叱るで恥ずかしいのはむしろこちらだった。
 ためいきが出る。
「しょうがねえだろ。明日は駄目なんだって」
「どうして」
「……主がどうしても俺で回したいんだと」
「俺だって君じゃないとダメなのに!」
 仕事仕事仕事、仕事。仕事以外にだいじなものなんてないの。
 その台詞はどこかの三文芝居か何かで聞いたことがあった。だけどとっくに呆れつつも、正直申し訳なくなってくるのも当然ある。  約束などはしていなかったにせよ、彼としても常々近侍を任されている立場上、身も心もすっかり自由、などという休日はとても貴重なもので。それをよくわかっている以上、出来る限りの希望は叶えてあげたいというのも当然あるのだけれど。

――明日の編成はあなたを中心に組んでいます。

 伝言や掲示で済むものをわざわざ呼び出して宣言してきた相手との元の予定をどうにかしない限り、自分のこのきもちは通じるような気がしない。
 とはいえ断れるものでもなく仕方なくこうして嚙み砕きに噛み砕いて、明日と言ってきた彼に伝えれば、聞き分けがいいとはどうにも言い難い行動を起こされ、謝罪以前に様々な感情をどんぶりにくれたのである。
 総括すれば憂鬱、ということなのだが。
「……光忠」
「なに?」
「夕方には解散になるだろうから、それからどこかに…」
「なるわけないじゃん。資材集めの遠征なら朝から晩までじゃないか」
 やはり誤魔化されてはくれなかったか。
 荷物を持ち直しながらぼんやりと考える。それはまあ、日頃その指示を出す側にいるのだから当然の話だとも言える。
 それから少し前と同じように拗ねて走り去って、すぐそこで待っていた彼は、待っていた地点に差し掛かると、過ぎるわけもないのに通せんぼをする。結局、言い合いながら門から資材倉庫の間を数往復していた。
 結構な時間を使わせたと様子を窺えば、歪んだ眉でさほど不機嫌でもなさそうな表情と声で名前を呼ぶものだから、どうしようかと謝ることばかり考えてしまう。
「明日の遠征、俺も行く」
「は?」
「どうせ練度の問題で誰かは入れるだろうし俺が行く」
 もうこの際何でもいいよ。
 今運んでいるのが冷却水でなければ、何も気にしないで彼を抱きしめていたような気がした。

審神者に嵌められて非番が重ならなかった二振り。この後遠征部隊に捻じ込む。
審神者の意図としては日本号に使う時間も充ててほしかったのだけれど、福ちゃんにそれは無理でしょっていうね。

2023/10/25
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