*光忠兄弟がお泊り会をしている間の長船共有スペースにて後代たちの会話。
「……で、今回の顛末について知っていた者は?」
「でていったふくちゃんのいくさきが日本号さんのところじゃなかったのはわかったのだ」
「福島さんがサプライズをしてないのはわかった」
「福島のちちうえが実休のちちうえにこまごまときろくをとらせていたのはしっていたよ」
「実休の親父殿は物忘れひどいなって思ってた」
「……で、長義は?」
「……実は主から相談されていて概ね把握していた」
「え、どうして?」
「バグ報告の結果どういう展開になるかを主が聞いてきたんだ。俺と、則宗殿に」
「ああ、監査官」
「それを知りたい理由を聞いたら教えてくれた。とはいえ、伏せていたいという福島の祖の気持ちもわかるから、俺たちも向こうから言われるまでは黙っていようとなったのだけど」
「福島のちちうえはなかなかがんこものだった、と」
「流石に日本号にくらいは話すだろうと思っていたけれどね」
「残念、親しい相手には限界まで見栄を張るのが光忠だよ」
「俺もそれはわかってるさ。だから俺は古備前殿の誰かに話すのではないかと思っていた……いや、願っていた」
「それにしても、福ちゃんはどうにも不器用だよな」
「ほぼじばくだからねえ」
「じばく?」
「実のところ福島さんが日本号のこと置いて実休さんにあれだけ構ったら、大体の奴は怪しむよね。ま、話聞く限り織田の連中は気付いてなかったけど」
「そういうはなしなら乱や秋田も実休のおじいさまにはなにかあるのかなっていってたんだぞ」
「あれだけ露骨なら勘のいい者は気付くだろうね」
「そこで気付かなった燭台切の親父殿なわけだが」
「まああのバグならちちうえたちはどちらもそうそうにきづけるだろうが」
「確かに政府に届いた報告を何件か読んだが、大体は食事の味付けを気にかけた燭台切光忠か、会話がすれ違う織田の連中の誰かが気付くと言うパターンが多かった」
「おや、うちの福島の親父殿はレアケースかい」
「燭台切のちちうえのはんのうもレアケースだろうけどね」
「やっぱ浮かれてたんだろうなあ…」
「刀工が同じ兄弟が来るのはやはり浮かれるものなのかい」
「そこんとこどうなんだい?」
「あの長光のだいひょうさくとあえるのかときもちははやったね」
「やっぱり景光だって聞いたらちょっと主のことせっついたよね」
「そんなに?」
「こればっかりはそのたちばになってみないとわからないかもね」
「でも、燭台切の祖は二度目だろう?」
「一度目の時に年末の誰でもいいから駆り出される時期に厨で戦力外通告食らってた話する?」
「それに多分だけど光忠同士でも実休光忠は特別なんじゃないか?」
「ああ、それは何となくわかるな。福島の祖が普段からは到底考えられない判断をしていたのは相手が実休光忠だったからとも考えられるしね」
「…………」
「どうした、謙信」
「……やっぱり、いってほしかったのだ」
「謙信」
「おじいさまたちどうしのはなしでも、こんかいふくちゃんはとってもくるしんだのだ。そうなるまえに、ぼくたちにもいってくれたら、なにかできたかもしれないのに」
「そうだねー、やっぱ言ってほしかったよねー」
「小竜まで」
「だってそうじゃん。福島さんはテンパっちゃってたから難しいけどさ、実休さんは何かおかしいなって思ったなら俺たちにも相談してほしいじゃん」
「……俺たちに相談した結果、重くとらえた福島の祖が大暴走したのでは?」
「そういういみではとてもはやくはっかくしたのだな」
「発覚後瞬く間に蚊帳の外に追いやられたけどな」
「そこは燭台切さんも同じなわけだから、あんだけキレたんでしょ?」
「あれはすごかった…」
「相談しない福島の祖にキレて、見当違いの心配をしだす実休の祖にキレて、最終的に何も気付けなかった自分にキレて」
「織田の面々ドン引きだったね」
「多分一番わかってほしい実休の親父殿が一番何もわかってなかったんだよな」
「そういえば、あの時ふくちゃんはどこにいたのだ?」
「福島さんはねぇ、日本号に回収されて慰めてもらってたんじゃないかな」
「日本号のやつも今回の件はだいぶ堪えてたからな」
「そうなのかい?」
「おうよ。最近福ちゃんが相手してくんない、お前ら長船で抱え込んでんのかって絡んできてさあ」
「前半はともかく後半は否定したいよね。長船というより実休さんだから俺たち何もしてないじゃない。いや、実休さんは長船だから長船の話なのか?」
「それは拡大解釈だろう」
「まあそれはともかく、だ」
「うん?」
「光忠たちにはもっと俺たちを頼ってもらいたいもんだよね」
「福島のちちうえはもちろんだけど、ほかの光忠たちもだね」
「古株なのもあって燭台切さんも全然俺たちのこと頼らないしねえ」
「ぼくたちだっててつだえることはあるのだ」
「俺たちももっと頼られるようにならなくてはだね」