🗐 気まぐれ日記

主に更新履歴。その他管理人の日々の徒然

No.165

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「福島なり福ちゃんなり、好きに呼んでよ」
 現れたそいつに動揺を隠せなかった。
 かつて数年だけ同じ主の元にあった相手。
 日の本一と称される己に、人間のような恋と執着を抱かせた相手。
 そのくせ、こちらのことなど一切振り向きもしなかった相手。
 だからこそ、どうにかこちらを向かせようと躍起になった相手。
 そしてそれが叶う前に別れることになった、そんな相手。
 だからこれは悪い夢だ。そうでなければ、頭がどうにかなってしまいそうだ。
 気障な物言い。洒落た装い。それはいい。前からそんなものだった。薔薇なんてものを携えているのは離れた後に生じた物語だろう。俺の酒と同じだ。
 俺が受け入れられないのは、ただひとつ。
「号ちゃん!」
 向けられるその声の、視線の、微笑みの甘さに怖気が走る。
 違う、違う違う違う!何もかもが違う!
 あの日の俺が焦がれたのは、恋をしたのは。
 涼やかで軽やかで、穏やかで柔らかで。けれどそのくせ触れれば切れそうな鋭さを隠し持っていて。だからこそ手折りたくなるような奴だった。
 こんな甘く蕩ける顔を見せるような奴では断じてない。
 ああ、それなのに。
「……ただいま」
 コイツが望んでいるであろう言葉がぽろりと口から出てしまったのは何故だろう。
 もう離さないと宣う涙声に充足感を感じているのは、何故だろう。

1「知らないきみがそこにいた」#記憶より深く刻まれた愛

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2025年6月25日(水) 18時17分46秒〔13日前〕