No.166
「号ちゃん」
甘やかな声が後をついて回る。
なんだかんだあってこいつの教育係は俺になった。
そこは構わない。この本丸にこいつの縁者は少ないし、そのうちの有力だった方がおかしくなった。それだけのことだ。
それにこれは元々狙っていた立場だ。
本丸での人の身の生活や刀剣男士としての在り方をひとつひとつ教える。多分、適度に距離を置きつつも、話自体はきちんと聞いていて、自分でやって失敗したりしながら俺に向かってすごいんだなとか言うのだろうと思っていた。そこからこちらを見直させ、今度こそ口説き落としてやるつもりだった。
それがどうだ。
「号ちゃん、これどうするの?」
こてんと首を傾げて尋ねる。媚びるようなその仕草に眉を寄せる。
何だその態度は。お前はこの俺に媚びるようなやつじゃなかったはずだ。何でそんな、俺に甘えるような態度を取るんだ。
「……こうして、こうだ」
「わ、待って!ええとこうして……こう?」
辿々しい手つきで教えた通りにやるのを見守る。できた、と得意げに見せてくるのはどこか子どもじみていて、どうしても記憶の中の光忠とは馴染まない。
「号ちゃんは何でもできるんだねぇ」
すごいなぁと目を輝かせるのがこそばゆい。そういえば燭台切にも似たような目を向けていて、誰にでも向けるものなのかと白けた気持ちになる。
「……大したことじゃねぇ。お前もやってりゃそのうちできるようになるだろ」
それでも、そんなことを言いながら頭をくしゃくしゃと掻き回す。静止の言葉と裏腹に満更でもなく楽しげに笑う姿はやはり子供じみている。
2「書き換えられた日常」#記憶より深く刻まれた愛
甘やかな声が後をついて回る。
なんだかんだあってこいつの教育係は俺になった。
そこは構わない。この本丸にこいつの縁者は少ないし、そのうちの有力だった方がおかしくなった。それだけのことだ。
それにこれは元々狙っていた立場だ。
本丸での人の身の生活や刀剣男士としての在り方をひとつひとつ教える。多分、適度に距離を置きつつも、話自体はきちんと聞いていて、自分でやって失敗したりしながら俺に向かってすごいんだなとか言うのだろうと思っていた。そこからこちらを見直させ、今度こそ口説き落としてやるつもりだった。
それがどうだ。
「号ちゃん、これどうするの?」
こてんと首を傾げて尋ねる。媚びるようなその仕草に眉を寄せる。
何だその態度は。お前はこの俺に媚びるようなやつじゃなかったはずだ。何でそんな、俺に甘えるような態度を取るんだ。
「……こうして、こうだ」
「わ、待って!ええとこうして……こう?」
辿々しい手つきで教えた通りにやるのを見守る。できた、と得意げに見せてくるのはどこか子どもじみていて、どうしても記憶の中の光忠とは馴染まない。
「号ちゃんは何でもできるんだねぇ」
すごいなぁと目を輝かせるのがこそばゆい。そういえば燭台切にも似たような目を向けていて、誰にでも向けるものなのかと白けた気持ちになる。
「……大したことじゃねぇ。お前もやってりゃそのうちできるようになるだろ」
それでも、そんなことを言いながら頭をくしゃくしゃと掻き回す。静止の言葉と裏腹に満更でもなく楽しげに笑う姿はやはり子供じみている。
2「書き換えられた日常」#記憶より深く刻まれた愛
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